私の大学時代の同級生がこんな活動をしていることを最近知りました。
有楽町日比谷地区のまちづくり提案 | 三信ビル保存プロジェクト

東京千代田区にある「三信ビル」という建物の保存を訴えるというものです。
築70年という建物です。私は行ったことはありませんが、なかなかいい雰囲気の建物のようですね。
この世にあるもすべていずれ劣化して消えていきます。それもまた良し、と私は思いますし、所有者が生かすも殺すも決めるというのは至極当然のことです。コンクリートのマンションを30年で建て替えないといけないのは大きな社会損失かつエネルギーの無駄遣いだとは思いますが、70年建った建物ならば天寿を全うしたと考えてもいいのかなぁ、とも。もっとも築何年ならいいという基準はありませんが。
というわけで、いろいろ考えて同級生に以下のメールを送ってみました。やりとりはその同級生の承諾が得られたらこのページでも掲載したいと思います。
以下私のメールから------------------------------------------------------------
(1)三信ビルの所有者は誰ですか?
唐突ですが、官なのか民なのかというのはこれからのこの建物の運命を左右する
と思います。このビルの保存提案の中で日比谷三井ビルとの共同建て替えを提案
されていますが、実現の可能性はどの程度あるのか気になります。
(2)日比谷三井ビルは建て替えられるべきものなのか?
提案の中で読みとることができなかったのですが、土地勘のない私にとっては日
比谷三井ビルの建て替えは実に唐突に聞こえました。また、日比谷三井ビルは建
て替えられるべきものなのかどうかについての検証(又はそのアピール)が不十
分に思います。こっちは残してこっちは建て替えるというのは、見方によっては
かなり勝手な論理に聞こえます。
(3)そもそも三信ビルはなぜ建て替える案が出たのか?
私も建築設計に携わる人間として建て替えについては意見がないわけではありま
せん。維持するのに相当な費用がかかるようになったのか、建築や設備などの機
能的に現在のニーズを満たさなくなったのか、”お金”という面での検証(又は
そのアピール)がほしいと思います。建物に限らずこの世に存在するすべてのも
のにLCC(ライフサイクルコスト・そのものがこの世に生を受けてから消滅するま
でに要するすべての費用)があります。建物のLCCは、新築時の費用と維持費と
解体時の費用となると思いますが、a.三信ビルを残した場合、b.提案のとおり実
施した場合、c.解体して全く新しい建物を建てた場合、で考えたときに費用的に
有利なのはどれなのかという数字も見せてほしいと思います。
もちろん世の中「お金」だけで物事が決まるとは思いませんし、それを知った上
で建物を残していく、かわいがっていくという考えに反対するつもりはありませ
ん。
-------------------------------------------------------------ここまで
その同級生の回答と承諾があったので、追記します。
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(1)三信ビルの所有者は誰ですか?
三信ビルの所有者は三井不動産です。提案書の記載が説明不足でしたね。
二つの建物が同じ所有者というのは、この提案の大きな前提条件なので、
提案書を若干見直してみようと思います。
(2)日比谷三井ビルは建て替えられるべきものなのか?
デベロッパーの視点からするとYESとしていいと思います。
日比谷三井ビルは、1960年竣工、45年が経過しており、法定耐用年数は残り
2年です。
加えて、基準階階高3.3mと非常に低く、
リニューアルでオフィスビルのインテリジェント化を進めるのは難しいでしょう。
一方、立地条件や敷地の形状から勘案すると、オフィスの需要も見込める上に、
建て替えて最新のオフィスとなれば賃料単価は上がりますし、
総合設計を適用した建替えによってかなりの容積ボーナスを見込めます。
以上のことから考えて、所有者としては建て替えたいと考えていると思います。
これらはあくまでも私の推察ですが、このことを提案の前提条件としています。
これも提案書の中では説明不足ですね。
(3)そもそも三信ビルはなぜ建て替える案が出たのか?
正直なところ、三信ビルの解体が決定された経緯は分かりません。
平成17年1月21日 三井不動産株式会社のニュースリリースによると、
「近年、建築・設備の両面にわたって老朽化が進む状況となり、
大規模リニューアルなど様々な施策を講じたとしても、
今後長期にわたって運営・管理していくことが困難であると判断いたしまし
た。」
とあります。(http: //www.mitsuifudosan.co.jp/home/news/2005/0121/index.html)
しかし、これは、歴史的建築物に手を入れながら使っている先例※が示すとうり、
技術的・コスト的にに難しいということではないと感じています。
(※歴史的な建築物に手を入れながら使っている先例
関西では、
京都の新風館、大阪市中央公会堂、神戸居留地の元三井住友銀行(PDF)(現在はブ
ティックとして利用)
生駒ビル、シェ・ワダ、五感(旧新井ビル)
関東には少ないのですが、横浜赤レンガ、銀座和光(旧服部時計店)、明治
生命館など)
目視レベルですが躯体の大きな損傷もなく、階高もそこそこある三信ビルは、
オフィスとしては難しくても、SOHOやホテルなど、
用途変更で使い続けられる可能性は、十分にあると考えられます。
(当然のことですが、躯体については詳細な調査が必要です)
では、なぜ建替えるのか?
日比谷三井ビルと同じく、
総合設計などを適用して建て替えることで、今以上の収益性が期待できるた
めだと思います。
しかも、三信ビルの部分保存による容積ボーナスが期待できます。
(個人的には、部分保存には反対です。
銀座の「交詢社ビル」や北浜の「大阪証券取引所」がその最新の例ですが、
取って付けたような部分保存は、
「一部だけでも残したんだ」という事業者の言い訳にしかなってないよう
に感じます)
また、これは日比谷三井ビル、三信ビルどちらにも当てはまることですが、
近年、不動産の証券化などが本格的に導入され、
以前よりも資金調達が容易になった背景も無関係ではないでしょう。
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それで私が返信した内容が以下の通りです。
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> (1)三信ビルの所有者は誰ですか?
そうだよね。その前提条件がないとこのプロジェクトが夢物語になってしまうか
らね。ただ、「だからやりやすいのだ(実現可能性が高いのだ)」ということを
全面にアピールするべきかなぁと思います。そうすると私のような疑問がへりま
す。
> (2)日比谷三井ビルは建て替えられるべきものなのか?
おそらくそんな事情があるのだろうと思っていました。いわゆる「高度成長期の
中途半端でどうしようもない建物」だろうという想像はしていました。
そういう背景で、日比谷三井ビルの建て替え話と三信ビルの保存のドッキングが
生まれたのだと思います。
ただ、そこをあえて言わしてもらうと「日比谷三井ビル」もリニューアルするす
べはないものかと思います。両方を生かす道はないものかと。最もこれは所有者
の全面的な協力が必要ですし、その上に役所の協力や実務的な協議が必要ですか
ら、今の段階での提案はあれでいいのだろうと思います。
できれば日比谷三井ビルを残すとどうなるかという話もあっていいかなぁ。
> (3)そもそも三信ビルはなぜ建て替える案が出たのか?
私は基本的にせっかく建てた建物を壊さないで何とか使えないかと言うことを考
える方です。
ただ、やはり経済的な事情が大きくことを左右するのが現状です。
私はこの質問で検証してほしいのは、今この提案で仕様としていることがどの程
度の費用がかかるのか? それは十分見合うことなのか、ということです。建て
替えにしても保存にしても、部分保存にしても、その意味と価値・目的はとても
明確でとても大切なことです。しかし、所有者を説得する材料としては、「じゃぁ、
かねはどうなるねん?」ということではないでしょうか?(これは私が大阪人だ
からか?関東の人には”銭金”以外の評価軸があるのなら別ですが。)
そこをちょこっと見せてくれたら説得力が違うのかなぁと言う気がします。
私の事務所でもビルの再生計画がここ最近増えています。どれも小さな事務所ビルなんですがね。昭和48年頃に建てられたいわゆる”高度成長期”の建物です。これを如何にいい建物にしてきちんと収益を上げていくかと言うことを考えるのがとても大切なことだと思っています。
建物には寿命があるというようなことをこのホームページにも書きました。ただその寿命を決め
るのは、その建物の新築時に関わった人がどの程度の思いを込めてその建物を造っ
たかによると思っています。都心にある狭い敷地の基準法無視のどうしようもな
い木造建て売り住宅なら、一定の役目を終えたら早くつぶしてしまえと思います
し、手をかけて大事に作られて、大事に育てられたものは、できる限りその命を
延ばしてやりたいと思います。経済的な事情だけで切り捨ててはいけないと思い
ます。
しかし、私たちは建物の所有者ではありません。建物の運命を最後に決断するの
は所有者です。私たちにできるのは、何が所有者にとって有利なのか、ひいては
社会全体にとって意味のあることなのか、を所有者に理解してもらうことだけだ
と思います。
話を元に戻しますが、私がビルの再生計画を立てるときは、経済的な損益も含め
て提案します。今このビルにいくらのお金をかけて、それが将来どのようなキャッ
シュフロー(収支)になるのかを所有者に示します。その上でどうするかを決め
てもらいます。
(原文ままではなく編集しています。)
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その後の返信で、
「土地代も含めた開発利益概算したうえで、各々の建て替えよりも、提案している計画の方が開発利益が大きいことを確認しています。」
というコメントも頂きました。
また、返信の中で、
「日比谷三井ビルは、たしかに、今見ると中途半端な建物なのですが、
竣工当初は最先端の大規模オフィスとして、かなり評判になったようです。
階高が低いのは、当時の法規制(100尺規定だったとおもうのですが)によると
ころが大きいようです。
フロア面積がもう少し小さかったり、用途を事務所以外に変更すれば、
低い階高なりのリノベーションが考えられると思うのですが、
高い階高、近年の設備の仕様、柱のない大空間
を求められる最近のオフィス需要では、ちょっとつらいかもしれません。」
ということですが、私としては竣工当時評判になった建物だったとしても、30年で機能限界(構造的な寿命とは別)に達するのはやはり残念です。私は設計をするときには、100年使ってほしいと思って作りますし、10年先、50年先、100年先を考えて今を作りたいと考えています。100年間使ってもらえるかどうかは分かりません。こんな流れの速い時代です。30年で日比谷三井ビルのように機能限界に達するかもしれません。でも、やはり”今だけのこと””目先の利益だけ”を考えないで設計の仕事に携わりたいと思っています。
もちろん、施主の理解を得た上で、という大前提はありますが。
もし、ここまで読まれた方でご意見ありましたら、遠慮無くコメント頂ければと思います。